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初恋の終わり
「いいかげんにしてくれ。」
思わず立ち上がり、目に涙を浮かべ、怒りを露わにしているいままで見たことのない篤くんの姿に私は驚きを隠せなかった。
私、木暮音羽と親友の片桐優香そして飯田篤くんは、創作料理が美味しいという個室レストランで久しぶりに揃った幼なじみの気安さもあって、仕事の話から思い出話にと楽しい時間を過ごしていた。
温厚な篤くんの態度が変わったのは、篤くんが急に付き合い出したと言う彼女、浅倉梨香子の噂を私が持ち出した時だった。
「梨香子の何を知ってる?あいつは優しいのに傷ついてばかりで…友達と彼氏には裏切られて、その彼氏とは去年の夏に別れてる。俺は全部知ってて、付き合ってんだよ。
何も知らない外野にごちゃごちゃ言われて、梨香子が傷つくのは、もうたくさんなんだ。
これ以上、梨香子を傷つけたりするなら音羽も優香ももう縁切る。」
篤くんはいつもにこにこしていて、優しくて……
優香がやらかしても「またかよ。」とか言いつつもフォローしてくれるような人。
私がフランスに行く事になった時も
「音羽、俺が子どもで力がないから音羽を守りきれなくてごめん。向こうに着いて落ち着いたら、連絡してくれ。すぐには無理でも会いに行くから。」
って言ってくれた……
それが縁切るって……
「ちょ、ちょっと待ってよ。飯田くん。」
優香が篤くんを宥めようとするが、私は呆然と彼を見送る事しかできなかった。
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