711人が本棚に入れています
本棚に追加
私は、慣れるまで他の部署と同じ勤務時間でいいと言われて、初日は5時過ぎに席を立つ。
「お先に失礼します。」
「おう、おつかれ。」
何語かわからない、多分アラビア方面の言葉を話しながら、課長は挨拶だけしてくれた。
朝から昼まで寝ていたが、その後はひたすら毎回違う言語を駆使して電話連絡している課長は、確かにすごい人らしいし、寝ていたのが勤務時間外で、家にほとんど帰らないから、ソファー周りを自宅扱いしていると聞くとワーカホリックという噂も納得だ。
明日は課長の勤務時間外を邪魔しないようにしようと思った。
「おはようございます。」
配属になって10日ほどが経ち、今日も邪魔しないようにしようと出勤すると課長の姿がソファーにない。
家に帰れたのかと思って、自分の仕事をしていると課長が戻ってきた。
「はぁ。会議、終わった。眠かった…」
「お疲れ様で…」
書類から顔を上げて、課長に挨拶をしようとして、固まった。
目の前にいるのは、身長だって180センチくらいの高さだし、声が同じだから、多分課長で間違いない。
すらっとした体躯にピッタリ合ったオーダーメイドスーツに後ろに撫で付けた髪、髭も綺麗に剃られている。
そして私好みのどことなく篤くんに似た優しく整った顔。
「か、課長?」
「どうした?何かあったか?」
「別人じゃないですか?」
最初のコメントを投稿しよう!