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飯田篤の名前を探し、電話をかける。
「優香、何?」
聞こえて来た篤くんの声を聞いて涙が流れた。
「あ、あつしくん……」
「音羽?音羽か?」
「……うん……優香に借りて電話してる。」
「元気か?じゃないな……大丈夫か?」
「あ、あのね……私、パパのいるフランスに行く事になった……」
「えっ、いつ?」
「明日…だからもう会えないの。」
「音羽、俺が子どもで力がないから音羽を守りきれなくてごめん。向こうに着いて落ち着いたら、連絡してくれ。すぐには無理でも会いに行くから。」
「遠いよ。」
「バイトでも何でもして金貯めるから。」
「きっとパパが許してくれない。」
「時間はかかっても話をするよ。」
「ごめんね。」
「おと。」
電話を切ると優香に返す。
「音羽、いいの?」
「たぶんパパが許してくれないから、私が日本に戻って来た時に篤くんに会いに行くよ。」
結局、大学卒業までフランスで過ごした私は、ちょうど帰国する事になったパパをやっと説き伏せ、篤くんのお父さんの会社IDコーポレーションの採用試験を受け、入社した。
篤くんと大学まで一緒だった優香から、篤くんが特定の彼女を作っていないと聞いて、安心していた。
まだ私が会いに来るのを待っていてくれていると勝手に思っていたのだ。
結果は、独りよがりだった……
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