幼い恋

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「音羽、あれから何年経ったと思っている?10年近く会わずにいて、連絡も寄越さないで、彼女って、俺をからかっているのか?」 それでも言い方が優しいから、ちょっと拗ねているだけで、私にやきもちを妬かせたいだけのような気がしてくる。 「あれは、篤くんと私が高校生にふさわしくない付き合い方だったからとお父様が、赴任先に私を無理矢理連れて行っただけで、私は離れたくなかったのよ。」 「で、そのまま向こうで大学出て、帰ってこないヤツを待っていたと思った?」 「篤くん?優香に聞いたのよ。あれから誰とも付き合っていなかったって。私を待っていてくれたんでしょう?」 そこまで言うと篤くんが珍しく不機嫌な顔になるので何か言い間違いがあったのかと考える。 「俺は梨香子と結婚するつもりだから、過去の話はもう終わりにしてくれ。」 彼女だと言う子の手を引いて、篤くんは私にそれ以上何も言わずに歩き出す。 私は、それを呆然と見送ることしか出来なかった。
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