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 結果、抜け出したことはすぐにバレてしまった。  すぐにそれぞれの家へ連れ戻され、結局流星群を目にすることなく、その年の八月十六日は終わってしまった。  いや、双方の親に──特に暁人の母からは、人様の大事な息子に、しかも病弱なセイを無責任に連れ出して──と、長く説教を喰らってだ。  冷静にいまになってみれば、本当に危険なことをしたのだと深く反省している。  だけどあの頃は幼すぎて、目先のことしか、いやセイへの気持ちしか見えていなかったのだ。  若すぎた故の過ちである。  だけどこの日、目にすることのできなかった流星群は、しばらく暁人の中でその余韻を残していた。 それはセイも同じだったようだ。  来年もまた同じ日に、リベンジしようと真剣な顔で告げられた。 それから少しはにかんで、いや、これからは毎年ずっとお願い事をしに行こうよ、と誘われたのだ。  今年の八月十六日をやり直すために。  また同じ時刻、午後八時。  星が見やすい樟の立つ丘で、二人。  次こそは誰にも気づかれずに。  ハローの日に。 当時の二人は決行する日のことを、まるで秘密の合言葉のようにそう呼んでいた。  本来、ハローの日と呼ぶ語呂合わせだとしたら八月六日、もしくはありえないけれど八月六十一日が該当してただろう。  無茶苦茶だったけれど、当時の二人は大真面目に話し合って囁くように決めたのだ。  毎年これから、揃って流れ星を見るために。 暁人は胸に、むず痒さと甘酸っぱさが拡がりながら。
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