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 太陽の光を求めた向日葵が、少しずつ顔を動かしていく。  十七頃の時報のように蝉が主張を始め、短い夜がもう間もなくやって来るのだと浮き足だつ。  また今年も、この日がやって来たのだ。 「アキ、また今年も行くのか?」  呆れた顔で玄関まで見送るのは、暁人(あきと)の三つ上の兄貴だ。 「うん。行くよ」  毎年同じ、午後八時。  デイパックいっぱいにお菓子と二人分の飲み物をつめて、暁人は出かける。あと、充電を満タンにした携帯電話と、その他諸々も忘れずに。 「もうやめとけばいいのに、お前、けなげだなあ」  苦笑しながら兄貴が、ひんやりしたものを暁人の首筋へと押し充ててくる。 「冷たっ! おい、バカ!」  喚きながら振り返ると、すぐ横に水滴に覆われたビールの缶が見えた。  今日、暁人が行くと分かっていて事前に冷蔵庫でキンキンに冷やしておいてくれたのだろう。  何も言わずとも、きっかり二人分。  兄貴のもう片方の手にちらり見えるそれも、同じロゴの缶のものだ。しかも、のど越しのいい暁人の好きなやつ。 「これ、持ってけよ。陣中見舞だ」  どこからともなく用意周到に準備していたレジ袋に、二缶とも手際よくしまうと暁人の目の前に差し出してきた。  遠目に覗いただけでも、袋の中に冷却用のロックアイスがたっぷり入っているのがわかる。 「……え?」  瞠目した暁人に、ただ柔らかく兄貴は微笑んでみせた。 「今年こそ、逢えるといいな」  気遣わしげな兄貴に、暁人はお礼どころかなにも言葉が出なかった。  だというのに、弟想いの兄貴は、暁人に応える隙をわざと与えないよう「時間だろ」なんて急かし、家から追い出す。
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