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次の日。
わいは南向さんから一冊の本を渡された。なんや? わいはそんな策略に乗らへんで、一人でも外に行って遊んだる。そんな断固とした決意を持って、渡された本を見ると、それは迷路の本やった。
ゴクリと唾を飲む。め、迷路や。しかもこれ、面白そう!
実はわいも学級文庫に本を何冊か持ってきてたんや、どれも迷路の本。わいが迷路好きやから、父ちゃんが外国のお土産で買ってきてくれたんや。でも小さい子向けのちょっと簡単な迷路やった。
今、南向さんに渡された本はそれとは違って、険しい山々や深海、猛獣溢れるジャングルがカラフルなイラストが描かれていて、まさに冒険って感じでむっちゃ楽しそう。
南向さんが「どうぞ」と静かに進めてきた。
ど、どないしょ?
いや、まてまて、ここですんなり手に取って見たら南向さんの策略にまんまとハマってしまう。でも、面白そうやなー でも、なんか悔しい。ど、どないしょ。
そや!
自分で迷路書いて楽しもう。
わいは本を南向さんに返すと、画用紙を取り出して鉛筆で迷路を書き始めた。スタートを書いて、そっから自由に線を伸ばしていく、右に曲がって左に曲がって、って集中して迷路を書いてると、「コンプリート」って南向さんが呟いたんが聞こえた。
「こんぷりーって何?」
わいは思い切って振り返った。
「え? 任務完了ってことだけど」
「任務?」
「そう、外遊び撲滅計画」
「な、なにそれ?」
「外で、遊ぶんってつまらんやん」
「えっ?」( ゚д゚)
「だから、皆んな教室の中で遊べばええなって」
「ハァ?」
わいは手元の作成した迷路の画用紙を見た。
わい、まんまと南向さんの策略にハマってるやん。
「続き書いたら?」
「お、おう」
なんか、やるせない気持ちで迷路の続きを書いていく。なにしとんや、わい…… まるで、抜け道のない迷路に迷い込んだような気持ちやった。
なんか悔しー。
そして、みんな南向さんの策略にハマってるのを見て、ちょっと恐ろしくなった。
なんて恐ろしー、なんて恐ろしー、なんて恐ろしー。
わいはすました顔で書庫を片付けている南向さんをみて、「なんて恐ろしい」と3回呟いた。
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