トラウマ

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「勘違いすんなよ。コタと美原が別れて欲しいわけじゃない。ただ、あいつにはちゃんと笑ってて欲しくて……たまに気になるだけだ」 「そういうモンですかね……」  ため息と共に零すと、俺はテーブルに腕を乗せてそこに伏せる。 「何、忘れられない女でも居んの?意外だな」  リョウ先輩が立ち上がって俺の肩に腕を回してきて、俺は顔だけを上げた。 「……楽しんでます?」 「いや?お前は恋愛興味ないと思ってたから……悩んでても誰にも話さねぇだろーなぁ?ってちょっと心配はしてる」  にこっと笑われて俺は体を起こす。 「……俺、女苦手なんですよ」  口を開いてみても、ただ聞いてくれるリョウ先輩とウエ先輩。 ◆◇◆◇◆◇  中二の冬、バレンタインのチョコと共に「付き合って……ダメ?」そう言ってきたのは坂野。  同じクラスで特に断る理由も思い浮かばずOKしたが、その日から坂野が待っていて一緒に帰ったり、メッセージがしょっちゅう送られてきたり……すぐに辛いと思った。  部活終わりは好きにみんなと笑いながら帰りたかったし、帰ってまで連絡を取り合う意味もわからなかったから。 『会いたいなぁ』  そんなメッセージが届いても、さっきまで一緒だっただろ?としか思えなくてスマホを見ることさえ苦痛だった。 「ねぇ、私のこと好き?」  すぐにいつもにこにこ笑っていた坂野が眉を寄せて聞いてくる。  クラスでもいつも隣に来られてバスケのスコアを見ていても、ノートを書いていても集中できなくなった。
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