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二十三時と言ったのは三木なのに、あいつの家が見えるところまで来ても三木が出て来ない。
『寒い。帰るぞ』
メッセージを送ると、しばらくして出てきた白いモコモコの服を着た三木は笑って手を振った。
ため息を吐きつつ自転車で家の前まで行くと、三木は寒そうに身を縮こまらせる。
「寒いしやめとくか?」
「でも、小嶋はここまで来てくれたじゃん」
プルプルと震えて小さくなる姿に思わず笑ってしまった。
「何ぃ……」
ムッとする三木の頬に思わず手を伸ばすと、三木はビクッと肩を震わせる。
「冷たっ!!もーめちゃくちゃ冷えてるじゃん!」
言いながら握ってくる三木の手だって冷たい。
「もーここに自転車置いてさ、そこのお宮にしない?」
またブルッと震えて三木は繋いだ手を揺らした。
「……ま、近いし、行かないよりはいいか?」
手を離して自転車から降りると、三木は門戸を大きく開けて中に促す。
自転車を停めると、三木はこっちに身を寄せてきた。
「お前、その格好寒いだろ……」
やっぱり冷たい手を握って俺のコートのポケットに入れると、三木は笑って寄り添ってくる。
「歩きにくい」
「でも、あったかい気がしない?」
「……気のせいだろ?」
距離は近くても相変わらずなまま、俺たちは近くの古びたお宮に向かった。
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