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「あけおめー!さっぶっ!!」
新年最初の練習に顔を出したトモは大声で笑いつつ、両腕をさすって大袈裟に騒ぐ。
「軽く雪舞ってるもんな」
あまりにもの寒さに引き戸を閉めると、コタは無言でコートに包まって縮こまった。
俺は気にすることもなくパーカーとジャージのままでヨッシーが出しておいてくれたカゴからボールを取る。
ドリブルをしながらトップのスリーラインに行くと、クルッとボールを回しながら軽く投げた。
床に当たると跳ねてこっちに戻ってきたボールをキャッチしてそのままスリーを放つ。
リングにも当たることなくザッとネットをくぐる音を聞いて何となく幸先いい気がした。
「ご機嫌だな」
バッシュを履き終えたトモが立ち上がって転がったボールを拾いつつこっちに投げてくれる。
「ん?そうか?」
ボールを受け取ってその場でドリブルを始めると、トモはまだ震えながらこっちに走ってきた。
「年末年始、良いことでもあったのか?」
「別に?」
答えつつ、一つ思い当たってドリブルを止める。
「いや、初詣が効いたんじゃないか?」
右手でボールを持って指先でクルクルと回すと、トモはニヤリと笑った。
「結局行ったのかよ!でも、会わなかったな?」
「地元の古いお宮で人なんて居なかったからな」
回るスピードが落ちてきて右手で回しながら左手でボールを更に回転させる。
「人の居ないお宮で二人きりって……何したの?」
「お参りだろ?」
「そうじゃなくて……」
ニヤつくトモに何も答える気はなかった。
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