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「小嶋くん!」
呼ばれて振り返ると、小走りでやってきたのは菊川。
「何かあったか?」
一緒に居たトモとダイ、コタに先に行ってもらうと、菊川はフーっと息を吐き出してからこっちを見た。
「……フリ、じゃないの?」
「は?」
すぐに菊川の目が潤み始めて、できるならすぐにでもこの場から離れたくなる。
「最近の小嶋くんとミキはただのカップルだよ!?」
「……だから?」
聞くと、菊川はギュッと眉を寄せた。
縋るような目に俺は漏れそうになるため息を必死に堪える。
そもそもこれは俺と三木の問題で、菊川には関係ない。
それを言葉にしていいのだろうか。すると、
「キク!」
三木が体育館から出てきて、じっと俺たちを見ながら歩いてくる。
「諦めたんじゃなかったの?」
三木の声は驚くほどに穏やかで優しかった。
「どっちも本気ならね!でも、どっちも違うんでしょ!?どっちも好きじゃないなら何で付き合うの!?いつまでフリを続けるの!?」
泣きそうな菊川を三木が抱き締めて、すっぽり包んでしまう。
「キクもこの女バスのメンバーもかわいくて、守りたいし、抱き締めてあげたい!大好きだよ!みんな!」
こんな落ち着いていて大人びた声は聞いたことがない気がした。
「でもね、小嶋は居てくれる時は傍で安心したいし抱き締めて欲しいのよ」
ゆっくり腕の力を緩めて、三木は見上げる菊川に微笑む。
三木の腕の中に居ながらも菊川がこっちを見て、俺は三木の隣に立った。
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