22人が本棚に入れています
本棚に追加
「お互い干渉しないし、どっちも普段のペースは変えない。しかも、それでいいから付き合えるんじゃないの?」
その顔にはもう涙の気配はなくて、どこかスッキリとしたようにも見える。
「気づいてる?今、ちゃっかり手繋いでるけど」
笑われて見ると、確かに俺たちはしっかり指を絡めて手を繋いでいた。
どっちからいつ繋いだのかさえわからないほど、俺たちは当たり前のように寄り添っていたらしい。
「毎日メールして休みの日は一緒に過ごして……そんなことしなくてもミキと小嶋くんは十分カップルよ!ってか、もう熟年夫婦の域でしょ?」
あーあー!と首を回す菊川を見ていると、
「小嶋ぁ」
いつもの間延びした声で呼ばれて隣を見上げる。
瞬間、柔らかい唇が触れて俺は瞬きを繰り返した。
「……ドキドキした?」
ゆっくり離れて角度をつけたままで笑う三木。
垂れた前髪から覗く碧い目にドキドキと心臓が騒ぎ出す。
「お、前……」
さすがに目を見開いてパクパクと口を開けると、三木はケタケタと笑った。
「もー、二人で好きにして」
手を振って去っていく菊川の後ろ姿を見て、見られていたことに気づいて更に焦る。
「お前はバカなのかっ!?」
「えー?じゃあ、今なら二人きりだから今度は小嶋からして!」
スッと目を閉じられて俺はキョロキョロと辺りを見た。
確かに他に人は気配はない。
だけど……ここでするのか!?
しかも、少し屈まれていることに気づいて何となくおもしろくない。
最初のコメントを投稿しよう!