恋なんて必要ないけれど

男バス

　来るっ!!と思ったのに、さお先輩はフッと体を起こして微笑んだように見えて戸惑う。
　瞬間、ただでさえ小さい体を更に低くしてドリブルをして、ヤバいと思った時には俺の横をすり抜けていた。

「悪いっ！」

　謝りつつ足がすぐには出なくてさお先輩の背中をただ見ることになる。
　ペイントエリア（フリースローラインから真っ直ぐに下ろしたラインの内側）に侵入したさお先輩はリキとヨッシーが反応したのを見つつボールを肩辺りから後に放った。
　バシッとキャッチしたモト先輩は迷うことなくスリーを放つ。

「あ！すいませんっ！」

　モト先輩が叫ぶと、跳び上がったリキを抑えたウエ先輩がリバウンドを制して落ち着いてジャンプシュートを決めた。
　あっけなく先制されて悔しいが、バスケはすぐ今度は俺たちの攻撃となる。

「セイ！顔固いぞ！これは特に楽しく！だぞーっ!!」

　ハーフまで下がった先輩たちを見ながらドリブルをする俺の肩を叩いて笑いながらトモが走っていった。

「セイ！ハンデってことで俺にくれてもいいぞー！」

　まだ戻りきれていないリョウ先輩はとりあえず躱してハーフラインを越えつつフロントコートに入る。
　様子を窺っていると、ヨッシーが手をクロスしたまま上がってきて……でも、さお先輩が気づいたことを察してすぐにクルっと体の向きを変えた。
　その脇から出てきたのはリキ。