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「セイくん!ちょっといい?」
声をかけられてバッシュを脱いでいた手を止めると、さお先輩も隣に座ってバッシュの紐を解き始めた。
「バスケ、好き?」
「え?そりゃ、好きですよ?」
再び手を動かしてバッシュを端に置くとペットボトルのフタを開ける。
「でも、私には敵わないって思ったでしょ?」
じっと見られてまたそのまま動きを止めた。
「……私、チビでしょ?155ないのは女バスでもさすがにキツい。それなのに敵わないって思ってくれたんだよね?」
うまく答えることができなくて黙り込んだままとりあえずフタを元に戻す。
さお先輩は肩にかけていたタオルで汗を拭うと近くにあったボールを手に取った。
「小さいなら小さいなりの武器があるんだよ。だからセイくんも大丈夫!ただ、PGが迷っちゃダメ。セイくんは基礎がしっかりしてるんだから……武器はうまく使おう?」
チラッと再びこっちを見られてもどうしたらいいのかわからない。
「責任感が強いでしょ?でも、全部やろうとしなくていいんじゃない?」
「え?」
「基晴なんてスリー打って即謝ったりするでしょ?無理なのはフォローしてもらう!それがチームよ?」
さお先輩はトモと爆笑しているモト先輩を見て微笑む。
「ゲームメイクするためにイメージするのは大事!でも、“PG”だってただのポジションで、“キャプテン”も役割に過ぎないよ?背負い過ぎないでね!もっと頼っていいのよ!」
肩を叩いてモト先輩の元へ走る後ろ姿を見て俺は情けなさに潰されそうだった。
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