煩わしい

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 練習を終えて部室の鍵を締めると、ヨッシーがその鍵を返却に行ってくれる。  トモとコタ(二年Cの長谷(はせ)虎太郎(こたろう))は電車通学のためさっさと門へと歩いて行き、ダイとハナ(二年PF、花城(はなき)北斗(ほくと))、ユウ(二年C、宮崎(みやざき)悠太(ゆうた))は自転車置き場までは一緒だが方向が違うためにそこで分かれた。  自転車に跨がって漕ぎ出そうとした俺の目に飛び込んできたのは黒髪が多い学校の中では目立つ天然の金髪。  それが自転車置き場の脇に男と向かい合っている姿は自転車に乗ってどんどん走り去っていく中ではかなり目立っていた。 「好きなんです」  部活動の生徒だけとはいえ人もそれなりに通る中、堂々と告白する男に誰もが目を向ける。 「……ごめんなさい。今、お付き合いする気はないんです」  困ったような三木はペコリと頭を下げて足早に立ち去った。  走ってきた三木と目が合った気がするが特に会話はしないまま俺は自転車を漕ぎ出す。  こんな光景を見るのは珍しくない。  中学の頃からもう数え切れないほど三木が告白されるシーンは目にしてきた。  そんな何度も目にするほど告白される三木。  だが、いつも頭を下げて断る姿しか知らない。 「あいつも興味ないんだな」  門を出たところで呟くと、 「何が?」  真後ろから声がして、俺は振り返って口を噤んだ。
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