煩わしい

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 玄関のドアを開けると、 「お!お前も今、帰り?」  玄関の上がり框に腰掛けて靴紐を解く兄貴、光輝(こうき)が居た。 「兄貴も?」  興味はないが一応聞いておくと、兄貴はふふっと気持ち悪い笑みを浮かべる。 「彼女がバイトだから軽く食ったら終わる時間に合わせて迎えに行くんだよ」  なぜそんな面倒なことを……しかも、どうしてそれが嬉しそうなんだ? 「迎えにって……何で?」 「はぁ?暗いし、バイト終わって疲れてるだろ?ちょっとドライブして送るからじゃねぇか」 「それだけ?」 「腹減ってるなら軽く食べるけど?」  彼女は同じ大学でバイトまでは一緒に居たなんて聞いてますます理解不能だ。 「時間の無駄じゃん」  スニーカーを脱いで、まだ座ったままの兄貴を見下ろす。 「お前ね、高身長のイケメンならいいよ?でも、身長も学歴もない俺らはこういう地道な努力って大事なの!」  真剣な顔で力説する兄貴に呆れて、さっさと部屋に向かった。  リュックを下ろしてネクタイを解く。  帰ってきたらのんびり自分の時間を満喫したい。それなのに何でわざわざ?  着替えて置いてあるボールを手に取った。  イスに座って手の中でクルクル回しながら考えてみる。  会いたい……なんて……今日会っていたならもう十分だろ? 『誠也は家に帰って私のこと思い出したことある?』  不意に泣きながら言われた過去の言葉が蘇って俺の手からボールが落ちる。  舌打ちして頭を掻き乱すと、仰け反ってギュッと目を閉じた。
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