煩わしい

8/9
前へ
/134ページ
次へ
 ユウだけは文系だが、ダイがユウを教えて、俺はトモに教えてもらって勉強は進む。 「あーあー、彼女居たらくっついて勉強とかできんのにな」  まだそんなことを言うトモに俺はもう反応さえしない。 「え!?考えねぇ?彼女と横並びで教えてあげてさぁ!何かよくね?」 「よくねぇわ。バカップルだろ、それ」  トモが目の前に居るダイに話を振ったのを見て、俺はグラスを持って立ち上がった。  ユウもすぐについてきて俺たちは並んでグラスに飲み物を注ぐ。 「……彼女ってそんな騒ぐものか?」  アイスティーを入れ終えて何となく聞いてみると、ユウは少し考えるような仕草をした。 「うーん……欲しくないとは言わないけど、俺は今、そんな余裕ないかな。赤点回避で手一杯だ」  肩を竦めたユウを見て笑ってしまう。  目の前の現実にいっぱいいっぱいなのは俺だけではないらしい。  まぁ、ユウは本当にいつも赤点ギリギリでこっちが心配になるほどではあるが。 「でも、コタ見てると……羨ましいとは思うかな」  グラスを持って戻りながら言われて俺はそんなユウの顔を見上げつつ小さく息を吐く。 「……羨ましいか?」 「実際、コタだって俺と変わらないくらい勉強だってヤバかったのに今は(れい)先輩のお陰でテストも余裕だろ?」  ついでに持ってきてやったグラスをテーブルに置くと、トモはにこにこと笑いながら「何の話ー?」とこっちを見た。
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加