噛み砕け、金平糖。

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 修学院高校の駅伝部は、陸上長距離界では名の知られた名門チームだ。  全国大会常連の強豪校であり、実力があるから予算がおりて設備が整い、全国各地から有能な中学生が集まってきた。  須屋裕志も強いチームで実力を試したいと思い、4月から親元を離れ、この男子寮で生活しながら学校に通っている。   「柳先輩、地区大会出ないんだってよ」  朝食の食堂で、同じ一年の生徒のひそひそ話が耳に入った。 「柳先輩と仲良かった青井先輩が、他校生と揉めて今謹慎中じゃん。それで柳先輩もとばっちりだってさ」 「えーっヤバいな。柳先輩強いのに、それでも切られるのかよ」  柳先輩は駅伝部のエースで、裕志の理想とする走りを体現している人。入学してすぐの練習で衝撃を受けて、それ以来ずっと1番尊敬する先輩だ。 「どういうことだ!?」  居ても立っても居られず、裕志は振り返って後ろのテーブルに声をかけた。  その勢いに若干驚きながらも、同級生は教えてくれる。 「あぁ、連帯責任だってよ」 「厳しいよな〜柳先輩は他校生と喧嘩してないんだぜ。むしろ止めてたって話だけど」 「マジか……」  頭の中では昨夜見た枕元の“イガイガ”がチラつく。 (あれはすぐさま闇に葬らなくては。原型がわからなくなるまで砕いて2〜3回に分けて捨てよう) 「それで、柳先輩の穴、誰が出ると思う?」  さらに同級生が話しかけてきた時、 「大変だ、先輩らが帰ってきたぞ!」  廊下から慌て声の生徒が転がり込んてきた。
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