噛み砕け、金平糖。

7/8

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 何に対してからわからない激しい怒りが裕志を掻き立てた。  衝動のまま、布団の上に転がる無数のイガイガをかき集めて口に放り込む。 「何してるんだ」   工藤が慌てて止めようとする腕を払い、尚もイガイガを掴む。 「寮の規則とか食事コントロールとか、正直もうどうてもいい!俺は辞めるからな!」  辞めると決めたら、胸の内に巣食う靄が一気に晴れた。  口の中いっぱいに甘さが広がる。  傍らの工藤はしばらく呆然とした様子でみていた。が、何を思ったかぐっと手に力を入れて、持っていた袋を逆さにかざして残りの金平糖を全て自分の口に放り込んだ。  ボリボリバリバリ  バリバリボリボリ  しばらく男二人で無言で金平糖を食べた。  それぞれの靄を噛み、砕き、消化する。    全部食べ終わった後で 「これで証拠隠滅か」  と工藤が言った。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加