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九
「これください」
店のレジに立っていた私の前に、一つの白い箱が差し出された。
珍しくも人が少なく、春のせいかぼーっとしていた私は我に返り、慌てて応対する。
「はい」
そう言ってお客の顔を見、息を吐く。
「郁也君」
彼は、白い箱の他にもう一つ、紙の束を差し出した。表紙には、『青い光に照らされて』とある。
「これ、春休みに書いたの。えみかちゃん、読みたいって言ってたから」
「すごい、もうできたの?」
郁也はこくんと頷く。それから、今まで見せたことのない、悪戯をしたような顔で言った。
「あともう一つ、プレゼント」
「えー、なになに?」
そう聞きながら白い箱を表にしてーー。私は息を呑む。
青い目をした王子様が、箱の中からこちらを見つめている。
「お小遣いで買うの。だから、えみかちゃんも一緒に、遊ぼう」
真っ青で透き通るような目がきらりと輝いたその時、私は、王子様と目があったような気がした。
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