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 外は漆黒の闇に包まれていた。  家を飛び出してタクシーを拾う。運賃なんて気にせずに場所を告げ、バスがキャンプ場に向かう間、私は祈るような気持ちで人形を握りしめていた。  郁也。脳裏に、ゴミ捨て場で蹲る少女の私と重なるように、一人でしゃがみ込む彼の小さな背中が浮かぶ。  一時間ほどかけて、みなみざかキャンプ場に車が止まると、私は運転手の手に叩きつけるようにお金を渡し、おつりは不要な旨を告げながら芝生に足を踏み出す。看板の横にあったパンフレットを手に取り、地図を見て呻く。郁也の母が言ったとおり、なんとも広いところだった。  辺りを見回すと、数々のテントに平凡そうな灯りがともっている。中に人がいるのか、影が見える。そのすべてが幸せそうで、ここでは息を切らす私一人が歪だった。  大きな地図を見ながら、必死に考える。どこだ、どこだ。郁也が行きそうな場所は。けれど、脳が凍り付いたように、何も浮かばない。  無力感が襲ってきた。そうだよな、と自嘲する。  私は、郁也たちがどのあたりにテントを張ったのかも聞いていない。そもそも、彼らと出会ったのだってつい最近。お世辞にも二人をよく知っているとは言い難い。そんな私が郁也を探すのは難しいだろう。  けれど、思い出す。絶望していたあの日、私は希望に出会った。あの時のように、今も、諦めなければ奇跡のような何かが起こるかもしれない。  けれど、どうしよう。泣きたいほどに、思い当たる場所がない。  どうしたらいいの。私は、手の中にある人形の青い瞳を覗き込む。  その時、月光が彼の目に当たり、青っぽい光が反射して、地図上の一点に当たる。みなみざかの丘。  もしかして。  私は走り出した。
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