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 小さい頃の夢を見た。今まで記憶の中に埋もれていたもので、存在すら忘れかけていた、そんな出来事。  海が、遥か下に見える。空はそれと同じような青。そして、目の前の青は、もっと深い。  海が驚くほど下に見えるくらい高いゴミ山に、私は立っている。  そのゴミ山の中にある、今にも埋もれそうなそれを、私は拾い上げる。  それは、藍色に近い、向こうが見透かせそうなほどに綺麗な青色の目が顔にくっついた王子様の人形。家出してきた私の、救いとなってくれたもの。彼のその目が、私に言う。  僕をもう一度、王子様にして。  色々なものがくっついて汚くなっているその人形は、もはや王子様ではない。けれど彼は、再び王子になることを望んでいる。  その目に、私は頷く。  わかった。  あの日、母に反発して家を飛び出し、行き場もなく辿り着いたゴミ山で、私は彼と約束した。もう一度彼を王子様にする。  その約束は今も、果たされることなく宙ぶらりんになって、実家の私の部屋の引き出しで眠り続けている。
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