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 二階に上がり、引き出しを開ける。そこから古びたクッキー缶を取り出した。ひんやりとしたその表面に手を滑らせ、蓋を取ると、中から人形が出てくる。  彼についている青色の目が、未だかつてないほどに爛々と輝いていて、私は思わず目を見張った。彼が、何かを訴えている。  困ってるよ。あの子が。  助けてあげようよ。  小さい頃の自分を思い出した。これからもずっと同じ日々が続くのかと泣いて、どうしようもない不安を抱えていたあの日に、ガラクタの中から覗いた彼の顔が、どれだけの希望をもたらしてくれたか。  ふと、郁也の顔が頭をよぎる。最後に会った時の郁也。あの緊張したような顔の裏で、彼は何を考えただろうか。自分の考えを理解してくれる人のいないところへ放り込まれる恐怖と、どう向き合っているのか。  そう思ったらもう、いてもたってもいられなくなった。人形を鞄の中に入れ、携帯で郁也の母が口にしたキャンプ場を調べ始める。
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