幸福の呪い

1/8
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

幸福の呪い

 彼女を幸せにすると約束してくれ。  泣きそうな顔をした友人にそう告げてやった。我ながら身勝手で最低な約束の取り付け方だと思った。逆の立場だったら、間違いなく僕は相手にキレていたに違いない。  でも、だって、君は彼女を愛しているんじゃないか。だったら、君が幸せにしてやってくれないか。  視界がぼやけた。  友人がどんな顔をしていたかはよく見えなかった。だが、頬に降ってきた生温い雨でだいたい察しはついていた。  人は約束がないと生きてはいけない。  しかしながら、約束は時に生涯体に纏わりつく呪いの鎖のようにもなりえる。  僕が与えたのは、間違いなく後者だ。  どうか、幸せになってくれ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!