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幸福の呪い
彼女を幸せにすると約束してくれ。
泣きそうな顔をした友人にそう告げてやった。我ながら身勝手で最低な約束の取り付け方だと思った。逆の立場だったら、間違いなく僕は相手にキレていたに違いない。
でも、だって、君は彼女を愛しているんじゃないか。だったら、君が幸せにしてやってくれないか。
視界がぼやけた。
友人がどんな顔をしていたかはよく見えなかった。だが、頬に降ってきた生温い雨でだいたい察しはついていた。
人は約束がないと生きてはいけない。
しかしながら、約束は時に生涯体に纏わりつく呪いの鎖のようにもなりえる。
僕が与えたのは、間違いなく後者だ。
どうか、幸せになってくれ。
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