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その6(ヴァーマナ視点)
そして、運命のパーティーが始まる。
今日はあの王子が主催するパーティーに行かねばならない。数が月前、お姉様がわたしに内緒で王子と会っていた事にはかなりショックを受けたがその夜にしっかりと聞いてしまったのだ。
お姉様が部屋で泣いていたのを!
いつもよりはっきりとした物言いといい、何かを隠しているような態度といい、絶対に何かあったと確信してお姉様が部屋に籠もってからずっとお姉様の部屋の扉に張り付いて確認したのだから間違いないわ!すすり泣く声と途切れながら微かに聞こえた「我慢……」と「婚約破棄……」という言葉。まさかとは思うけれどあの王子め、とうとうお姉様に実害を?!
もしかしたらお姉様は王子に酷いことをされて我慢していたのではないか。本当は婚約破棄したいけれど、王家との婚約を簡単には破棄できないから悩んでいたのでは?!そう考えだしたら居ても立っても居られなくなった。
あの変態め、ストーキングだけでも許せないのにその実態はドメスティックなバイオレンス男だったの?!そうよ、前世でもよくニュースになっていたじゃない。釣った魚に餌はやらない派だとか、束縛系ハラスメント男だとか。
あぁ、可哀想なお姉様!出来ることならば今直ぐにでもあんな男から解放してあげたい……!だが実際に王子と公爵令嬢の婚約破棄となるとかなりの大事だ。下手をしたらお姉様がキズモノだと虐げられてしまう可能性もある。このままでは当初の目的であった悪役令嬢救済ルートを探し出す前にお姉様が傷付けられてしまう……!
「ーーーーそうだわ」
わたしは閃いた。救済ルート以外でお姉様を助ける方法はこれしかないと……!
そしてパーティー当日。
案の定王子から贈られてきたドレスとアクセサリーの数々をいつもの如く宛名がないことを理由に奪い身につけると(だいたいお姉様にこんなド派手なドレス似合わないのよ!王子の瞳の色を使ったんでしょうけどいつもながらセンスが無さすぎだわ。淡い緑翠色のドレスに濃い茶色の薔薇の刺繍されたふわふわのプリンセスドレスなんて、まるでチョコミントよ!この茶色、どこから来た?!)お姉様に向き直ってにっこりと笑みを見せた。
「ねぇ、お姉様。アレックス様は今回のパーティーの主催者ですもの、わざわざエスコートに来てもらう必要はありませんわ。わたしと一緒に#ふたり__・・・__#でパーティー会場に向かいましょう」
「ヴァーマナ……。……えぇ、そうね。そうしましょうか」
お姉様は何か言いたそうに一瞬言葉を濁したがすぐに了承してくれた。ちなみにお姉様はわたしがこっそり用意しておいた真珠色のシンプルながらもしっとりとしたお姉様の美しさを引き立てるドレスを着ている。まるで女神だ。そう、すでに女神だ!(大事なことなので2回言った)
憂いのある表情も素敵だが、やはりお姉様には笑っていて欲しい。お姉様が泣くほどツライのを我慢していたなんて、わたしが我慢できるはずがないではないか。
わたしは決意した。そう、なにがなんでも!ヒロインの沽券にかけて略奪劇を披露し、お姉様と王子を婚約破棄させて見せるわ!
そして、酷い妹に婚約者を奪われた可哀想なお姉様は擁護されて、裏切り者の王子と略奪なんかした妹のわたしが断罪されればいいのよ!
もう少しで自由にしてあげれるから、待っててねお姉様!!
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