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 先代の国王ハイドリヒが亡くなり王太子であるセドリックが国王に即位したと聞いた。  あれから一年余り。この生活にも大分慣れた。リディアには、まだ色々と大変な思いをさせていると思う。それはそうだろう。生まれてからずっと貴族の娘として屋敷で何不自由なく生きてきたのだ。それがあのボロい一部屋しかない小屋で、食べ物も服も質素な物ばかり。リディアだって年頃の娘だ。不満など一度も口にはしないが、きっと思う事はある筈だ。自分を選ばなければ、今頃は王太子妃いや王妃になっていたのだ。 「君がいてくれて助かるよ」  ディオンが書類に目を通していると、不意に声を掛けられた。彼はディオンの雇い主であり辺境伯のカルロス・ウルタード。  この土地に来て一ヶ月ほどした時に、偶然町で出会した。彼とは元々面識があった。マリウスの友人であり、幾度もマリウスの護衛でついて来た際に顔を合わせている。  彼は何も聞かず、この城いや、要塞と呼ぶ方がしっくりくる。そこに通されて雇いたいと言われた。彼はディオンが今どういった状況なのかなど、通達が来て承知している筈だ。それにも関わらず普通ならば雇うなどあり得ない。罪人とされる自分を匿えば、いくら辺境伯とはいえど無事では済まない。 (何かの罠か?)  始めはそんな風に警戒したが、どうやら他意はないと分かった。ある意味で呆れる。流石あのマリウスの友人を名乗るだけはある。  だが兎に角あの時は、まだ仕事を探していた最中故正直助かった。持って来た金はまだ十分にあったが、何れ底は尽きる。なるべく早く仕事に就きたかった。  それから今日に至るまでずっと、彼の元で働いる。給金もかなりいい。本当ならもっと良い暮らしも出来る。だが余り派手な生活をするのは目立つ。それに一年経った未だにクロディルドはリディアを諦めていない様で探していると聞いた。無論自分も追われる身である。何時追手が現れるかも分からない。直ぐに逃げられる様に、出来るだけ身軽にしておきたかった。 「お帰りなさい」  家に帰ると毎日笑顔で出迎えてくれるリディアがいる。それだけで胸が熱くなり、疲れなど消え失せた。 「ただいま」  ご飯を一緒に食べて、下らない会話をする。湯を沸かし、湯浴みを済ませ床に就く。  寝床のベッドは一つしかない故、必然的に一緒に寝る事となる。リディアとこうやって暮らす様になり仕事も決まった日、遂に我慢出来ずにリディアを抱いた。  想像以上だった。妄想の中で抱いていたよりも遥かにずっと柔らかくて気持ちが良かった。初めてのリディアを気遣い優しくしたつもりではあったが……途中から興奮し過ぎて少し乱暴にしてしまった。  それから毎日の様に抱いている。自分でも流石に色ボケ過ぎると感じているが、これまで我慢に我慢を重ねて来た反動はどうしようもなく抑える事が出来なかった。一度外れたタガは戻らない。  ようやくリディアの心も身体も手に入れる事が出来、ディオンは今この上ない幸せに包まれていた。 「リディア……もう一回いい?」 「今日はもう、ダメ。一体何回するつもり⁉︎」  初夜の事を思い出したら、いつも以上に興奮してしまい今夜は既に三回している、それでもまだまだ足らない。だがリディアに顔を真っ赤にして怒られた。本当に生意気な所は変わらないと内心笑った。 「ねぇ、リディア……もう少し付き合ってよ」  耳元でそう囁いて身体を優しく撫でると、大人しくなった。  それをいい事にその後、更に三回した。気付けば朝になっていて、リディアは最後は意識を手放してしまっていた。流石にやり過ぎたと反省をしたが、またその夜ディオンは懲りる事なくリディアを抱くのだった。
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