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 ミニブタは大きな樫の木の下でじっと待っていた。  木の下にあった丸い石に腰かけてはいるが、背中に背負ったリュックには、ダイヤモンドと四角い形の金塊がぎっしりと詰まっているから、いくら力持ちのミニブタであっても、相当に重いはずだ。  このダイヤモンドと金塊は、七年前、ミニブタが相棒のウサギと一緒に、大金持ちの金庫から盗んだものである。  あの夜、大金持ちの家から逃げる時、二匹は追い詰められてしまった。 「このままじゃ二人とも捕まる。二手に別れよう」  ウサギが焦りながらミニブタに告げた。 「俺達の罪は七年で時効になる。時効になる日に、この樫の木の下で落ち合おう。お宝を分けるのは、その時までお預けだ」  その時効は三日前に過ぎた。  ミニブタは、時効の日にここにやって来て、それからずっとウサギを待っている。  自分が持って逃げたお宝には、一切、手を付けていない。  ウサギが持っている分と合わせて、きちんと数を数えて、二人で公平に分けるつもりでいるのだ。
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