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確かにおいしいけど、一般庶民には、かなり高い。
「すげーな」
「うん。美咲さんって、完全に金銭感覚壊れてるけど、それで全く問題なく生活できるところもコワイ」
「…………」
その半眼であっさり言うな、あっさり。
そして、哉有は綺麗な野菜と肉、店内のパン工房で焼けたばかりのバゲットを一本カゴに入れた。ここは人気のパン職人が出張でやってきて、小麦粉からこだわって作っている。食事用のシンプルなパンがとてもおいしいので、時々美咲も一緒に買いに来る。
「カレー?」
「ビーフシチュー。講義中にリクエストされた」
スマホに入ってきたメッセージ。二日続けて?と返したら、「昨日、やっぱりお前のが一番うまいって確信したら、どーしても食いたくなったの」と即答された。おまけに「もともと好きなものだから、何日続いてもいい」んだとか。
「……そりゃ失礼」
そしてとっとと会計を済ませようとキャッシャーに近づくと。
「あら、そうなの」
斜め後ろから聞き覚えのある声が。
「…………」
いやーな予感とともにそーーーっと顔半分だけ振り向くと。
(…………俺のセンサー、もー少し感度高くなれば近づかなくてすみそうなのに……)
間違いなく、いた。
綺麗で、スタイルが良くて、背が高くて(それなのにいつもハイヒールを履いている)、はっきり言って非の打ち所がない女性。
美咲母。
そう。このスーパーは、彼女のテリトリーの中にある。
欲しい米がこの辺りではここにしか売っていないので、こうしてたまーーーーに来ることになるのだが。
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