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「ただいまー」
「お帰りなさい」
ビーフシチューのいい匂い。「二日も連続で?」なんて言われても、都和からすれば作り手が別なら料理は全く別物で、同じ料理なら哉有が作ったものの方が美味しいに決まっている、と思っている。
事実、そう。
一緒にリクエストしたガーリックトーストは、ガーリックバターがたっぷり塗られて、パセリなし。それに今日は、
「お。アイスティー。綺麗な色だな。天笠と行ってきた?」
「はい。スコーン、全種類買ってましたよ。次は彼女連れてくって」
「女子は喜ぶだろ」
「と思います。さんちゃん、ああいう店好きだから」
「さんちゃん?」
「あまやんの彼女。一つ年上で、めっちゃくちゃきれいでかわいい」
「へえ……」
いまいち、都和に哉有の交友関係はよくわからない。
そのうち紹介してもらおう。
「いただきます」
「どうぞ」
ふふ。
哉有の、たまに出てくるこのそっけない「どうぞ」が都和は好きだ。全く飾らなくて、本当に素直な「どうぞ召し上がれ」。
「ん。……やっぱり、これ」
大好きな、哉有が作るビーフシチュー。ひと口食べて、やはり都和の唇が微笑んで無意識に呟いた。カリ、と正面で音がするのは、哉有がガーリックトーストを齧っているからだ。
「ああ、来週の金曜の夕方」
どき。
上目遣いに哉有が都和を見た。
「……食事会?」
「まあな。お前も来いとさ」
「やだ」
「だめ」
「落ち込む」
「なんで」
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