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「……絶対?」
「絶対に」
……こくり。
ちゅ。
「忘れてた」
そっと目の前に置かれた、シンプルな紙袋。
「デザートに食べよう」
哉有のお気に入りの、大学近くの可愛らしい小さな店で、毎日数量限定で販売されている、ジャンドゥーヤと小さなサイズのマリトッツォ。実は遠方からも客が足を伸ばす、知る人ぞ知るイタリア人菓子職人の店。
「……本当に仕事してたんですか」
いつも、どちらも午前中で売り切れてしまうのに。
「さあな。嫌いじゃないだろ」
自分用にはちゃんとビターなジャンドゥーヤ。
甘いものを一緒に食べて、一緒に「おいしい」と笑いたい、なんて。
どれだけ自分は哉有にやられちまってるんだか。
「大好き」
ちゅ。
「だよな」
いつもの平日なのに、いつもより落ち込んで、いつもより甘やかされている。
何だか悔しくなって哉有が小さく唇を噛むと、
「噛むな」
あっさりと顎を掬われて、ペロリと唇を舐められた。
「……ずるいですって」
く、と都和が喉で笑った。
「俺の、特権だろ」
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