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(全然せっかくじゃない。とっとと帰りたいんだけど)
はっきり言って、迷惑だ。
「いえ、このあと用事があります。本を取りに来ただけですので」
いつだかのように、断りを入れかけたが、
「私もあと10分しか時間はないの。少し、お話ししません?」
はあ。一体何をお話ししたいんでしょうか。
哉有は心中で大きなため息をついていた。さすがに女性にここまで食い下がられては、どうしようもない。
「じゃあ、10分だけ」
そして、いつぞやと同じように書店に併設されているコーヒーショップに入り、彼女はオリジナルコーヒーをストレートで、一番スタンダードなサイズで頼んだ。哉有はカフェオレをオーダーし、数分後には同じテーブルに向き合って座っていた。
(書店変えよう)
まあ、わからなくはない。
「失礼かもしれないけど」
彼女は名乗りもせずに、ひと口コーヒーを飲むと哉有を見た。
嫌な予感がして、哉有は手にしていたスマホの録音ボタンを押していた。
ぴ。
「あなた、本当にΩ型?」
その聞き方にカチンときた哉有はやや目を細め、
「本当に失礼ですね。そんなことは見ず知らずの人に聞かれることでも、答えることでもありません」
ピシャリと言うと、ごくんとカフェオレをひと口飲んだ。
なんだこいつ。
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