2830人が本棚に入れています
本棚に追加
「失礼の意味、ご存じですか?俺に対する質問を、俺が何度も聞いて確認するのは失礼でも何でもないでしょう?録音を気にするような、あなたの俺に対する質問の方が、よほど不躾です。約束の10分です。帰ります」
哉有はそのまま、とっとと店を出た。
何だあいつ!?
名家のお嬢様が聞いて呆れる!
一昔前の昼ドラに出てくる、資産家の旦那を寝取る女キャラだろあれ?
明らかに、哉有の眼が据わっている。
金曜日には、美咲さんの隣で堂々とあいつを眺めてやろうじゃないか。
他の二人はともかく(嫌だけど)、あいつだけには、絶対に絶対に絶対に美咲さんはやらない!
「ただいまー」
「お帰りなさい!」
ぴた。靴を脱ぎかけた都和が、顔だけを上げて真っ直ぐ先のリビングを見た。今日に限って、ドアが全開になっている。
何だ。どうした。
怒ってる??
テーブルにはドーンと鍋。
くつくつと穏やかな音といい匂いをさせている。
が。
「……哉有?虫の居所が悪そうだな」
キッチンで洗い物をしている哉有の背中に回った都和が、微笑して小さな頭を撫でた。
「めっちゃくちゃ悪い」
眼が据わっている。
「へえ?」
珍しい。
なんだかんだで割と穏やかな哉有が、こんな風に不機嫌をあからさまに顔に出したのは殆ど見たことがない。
最初のコメントを投稿しよう!