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テーブルについても、哉有の表情はいまいちだった。
「ん。これ、好きなやつだよな。こないだのより皮がもちもちでうまい」
哉有が好きな、水餃子鍋。
「……うん」
「フカヒレスープ入りのやつ、試食してほしいって言ってたけど、食う?」
「食べる」
「なら、頼んどくな」
「うん」
くす。
無表情で食べている哉有が即答し、都和は思わず笑った。
哉有が頭の中であれこれ考えている時は、話しかけても敬語や丁寧語が出ない。そして、会話が単語になる。
「本、ありがとな。あそこ、取り寄せるの早いけどここから遠いんだよな。助かった」
ぴく。
哉有の眉が上がった。
ん?
「……あんなの、お嬢さんじゃない」
「哉有?」
「……なんか、めちゃくちゃ腹が立ってきた……」
都和の肩が、小刻みに震えている。
不機嫌そうな哉有の話を真面目な顔で聞いてはいるが、気を抜くと爆笑しそうで、都和本人は必死。
そう。
見合写真③の彼女は、一般人の「理想のお嬢様像」をぶっ壊した訳だ。
相変わらず世間一般の「お嬢様」像は優しく、美しく、品がある、理想的な女性。当然のことだろうが、さすがにそれでは、彼女らの世界ではやっていけないので、本当にデキルお嬢様は、ちゃんと裏の顔を隠し持っている。
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