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いやいや、そもそもがそんな性悪お嬢を自分の嫁に迎えるなんて冗談じゃないが、哉有を知らずに勝てない喧嘩を売っちゃう彼女はまだまだ子どもで可愛いほうだ。都和にすれば、こいつらレベルは周りを蹴散らし、こき下ろしながら、少しでも自分が優位に立てるようによちよち徒競走をする幼稚園児程度にしか思えない。
美咲母からすれば、他人に弱みなんて見せる隙なく逞しく、自分の思う通りに事を運ぶなんて当たり前。強かで美しく、実は都和でさえも手のひらで転がせちゃうくらいの女性が理想的なんだろうが、現実に、美咲母のようなそんな女性はそうそういるもんじゃない。
「…………」
哉有にわからないように都和は深呼吸をして。
……ん?ちょっと待てよ。
「お前、その会話録音したの?」
「した。何か、何かに巻き込まれそうな、いやーな予感がして」
そして、嫌がる哉有のスマホを半ば無理やり取り上げて、それを聴いた都和の眼が、すう、と細くなった。
「……。家ごと潰すか」
不機嫌オーラを一気に放ってぼそりと呟いたそれに、
「え」
当然、ばっちり哉有の眼が覚めた。
声のトーンが、間違いなく「本気」のやつだったから。
「や、……大丈夫、です。なんか」
「ん」
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