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(結局、美咲さんの言動一つで、俺の気持ちなんておさまっちゃうんだよな)
隣で静かに眠る都和の寝顔を珍しく眺めながら、哉有が心の中で呟いた。
録音を聴いた都和が哉有とは比べ物にならないほど静かにブチ切れたあと、逆にそれを見てあっさり気持ちが穏やかになった哉有が甘えるように都和に抱きつくと、それはそれで鎮静剤の役割を果たしたようで。
(哉有がそう言うなら、ほっとくか)
と、とりあえず、見合写真③の彼女の家はお取りつぶしを免れた。とにかく、美咲家的には、その気になればその辺の名家と呼ばれる家の一つや二つを更地にするなんて(西条寺は更に別格だった)大した労力じゃないらしい。そして今やこれは、美咲家だけではなく、都和自身でもやってのける実力があるようなので、これはこれで恐怖。
自分のことを自分以上に想ってくれる。
そんなことを考えていたら、都和にもっとくっつきたくなり、
ちゅ。
いつもとは逆に、哉有が都和の頬に口付けた。
ほんの僅かに身動いだ、整いすぎた顔を眺めて髪を梳き。
(逆でも、……そうだな)
もし、都和がそんな状況になったら。哉有自身、自分がどうなるかなんて、想像もつかないし、冷静でいられる自信なんて一つもない。
「いつも隣に、いたいです」
自分よりもずっと広い胸に擦り寄ると、硬い腕にそっと抱かれた。
「……起こしました?」
「起きてた」
「……いつから?」
「キスの前」
「嘘だ」
「本当」
熱くなってきた哉有の頬を胸で感じながら、都和は「ふふ」と笑うと、顎の下の頭頂にそっと口付けた。
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