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「え?あ、すみません。おいしくて、ついもくもくと。天ぷらはさくさくで、こっちの塩で食べた方が俺は好きです。茶碗蒸しも、めちゃくちゃおいしいですよ」
哉有は哉有で、すでに自分の夕食モードになっていた。
ぷ、と都和が笑うと、
「え?……あ」
周りに人がいたのを思い出した。
「……すみません。つい」
「うん。うまいな。茶碗蒸しは、哉有の一番好きなやつ……、銀杏やる」
都和は、銀杏が嫌いだ。
ころ、と哉有の手もとの小皿に立派な銀杏が転がった。
「行儀悪い……」
「これだけ」
「舞茸の天ぷら、残しちゃダメですよ。めちゃくちゃおいしいから」
「……舞茸……やる」
都和は、銀杏も舞茸も嫌い。
「だめ」
「これだけ」
「こんなにおいしいの、食べたら好きになります」
正面では、なんとも言えない表情の三井川と、呆れたような美咲母が二人を眺めている。
「あれ。……うまい」
さく。
「ほらね」
「何だこれ。それも食っていい?」
「どうぞ」
すでに、外食に来た恋人同士二人の世界になっている。
「美咲さん」
「ん?」
「天ぷら、まだありますから、よろしかったら」
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