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デザートまで終わると、都和は哉有だけを連れてさっさと車に乗り込んだ。美咲母もそれ以上引きとめることはなく、名残惜しげに戸惑いがちな表情を浮かべる三井川はそのまま残して散会となった。
「とんでもないやつだな」
とことん哉有を無視しまくったあの態度が、都和はとことん気に入らない。
「料理は上手でしたね。全部おいしかった」
「あんなクソガキ、まともにはやっていけねえよ」
都和が不機嫌な声で低く呟いた。既に三井川はクソガキ扱いだ。もともとプライドは低くない都和のこと。少なくとも、自分のものにケチをつけられるなんて許せない。こと、何につけても充分優秀な哉有が、あんな世間知らずの小娘(とは言っても哉有の一つ上)にあんな扱いを受けるなんて許せるか!……というのが都和の心の声だ。
「美咲さんは」
車を走らせながら、一瞬都和が哉有を見た。
「特別なんですよ。息子としても、お見合いの相手としても」
(俺にとっても)
「お前は、その俺の特別なんだよ」
ふわりと、ほんの少しだけ寂しそうに笑った哉有の表情は、都和には見えていなかった。
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