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目の前には、都和の腕。後ろから大きな肩に抱き込まれ、首筋から静かな寝息が聞こえてくる。
「……ん、起きた?辛いか」
ほんの少し身体を動かすと、耳元で都和が囁くように言った。
「ううん。トイレ」
「ん。転ぶなよ」
「子どもじゃないですよ」
苦笑した哉有の頬に後ろから口付け、そっと腕を解くと、すぐに都和はまだ寝息を立て始めた。
キッチンもリビングも、何もなかったように綺麗に片付いていた。
(あれだけの料理、どうしたんだろう)
なんだかんだ言いながら結構食べた気はするが、全部平らげたわけではない。
何気なく冷蔵庫を開けると、
「あ」
いつも、哉有がしているように。
残った料理は形の揃った耐熱ガラスの保存容器に移され、きれいにスタッキングされていた。
デザートものは冷凍庫に。
鍋や器は引き取りに来てもらったようで、何も残っていない。
ふと見ると、炊飯器の予約ランプがついている。
そう言えば、「明日の朝は鰻丼と鍋な」なんて贅沢なことを言われていたかも。
(家事なんて、全然しないと思ってたのに)
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