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「哉有は、そういうのは苦手なの」
「あら」
最大限の祝福……。
「あと、よかったら、夕食はあれをどうぞ」
示されたのは、IHヒーターに置かれた大きな鍋。
「え、……あの」
「柳、あとはお願いね。じゃあ、今日は失礼するわ。哉有さん、お大事にね」
ぱち、と哉有が眼を丸くしている間に、美咲母はさっさと玄関を出て行ってしまった。
「…………」
哉有はまん丸な眼で都和と柳を交互に見、手元の宝石の入った箱と、婚姻届を見つめて。
「何?……が、起こったのか、よく、理解、でき、ません」
都和と柳は顔を見合わせたあとふふ、と楽しそうに笑った。
「うわ、おいしそう」
いつの間にか割烹着を着てキッチンに立っていた柳がテーブルに大きな平鍋ごとドーンと用意をしたのは、具沢山のおでん。
「春でもね、奥様のおでんは美味しいですよ。あつあつで食べていただくには、これが一番ですのでね。残ったものは、冷やしても美味しいですよ」
大根、たまご、餅入り巾着、牛すじ、はんぺん、手羽元、椎茸、タコ、ちくわぶ、がんもどき、さつま揚げ、こんにゃく、湯葉。
「失礼して、炊飯器をお借りいたしました」
「いえそんな」
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