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「ああ、まだ横になっててくれる?夕方までは安静指示が出てるんだ。柊くんが起きあがっちゃうと、僕、叱られちゃうんだよね。めっちゃくちゃ怖い上司に」
桜橋はやんわりと哉有を制した。
眼をまん丸にして心底驚いた表情の哉有が近づいて来た都和を見上げた。
「美咲さん?ここ、病院??」
電話が鳴り、
「はい、桜橋……うん、はいはい。すぐ行くよ」
はー、とため息をつくと、
「呼ばれちゃったので、18:00ごろにもう一度来ます。その時に問題なければ、帰ってもいいことにしましょう」
ね、といつものように穏やかに念押しをすると、桜橋は病室を出て行った。
起きあがろうとした哉有をもう一度制し、都和はその隣にそっと座ると、柔らかな表情で哉有の頭を撫でた。
「腹が痛いって、気を失っちまって」
え、と哉有が焦ったように都和を見上げた。
「でも、嘘みたいに、……もう、全然痛くないんですけど」
「本当だな?」
「はい」
くしゃ。
くしゃくしゃ。
くしゃ。
「……美咲さん?」
「うん。やっと、安心した」
いつもよりも優しい手つきで何度も髪をかき混ぜられた哉有が怪訝そうに都和を見たが、相手は穏やかなのに、ほんの少しだけ戸惑いの混ざった表情で笑うばかり。
「どうしたんですか」
「何が」
「何か」
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