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母は母で自立した生活ができる程度の収入はあるが、とても学生の哉有を養ってやれるほどの余裕は無く、かつ病気がちでもあったためか(今だってあれこれ心労もたたって入院中だ)、父は「金は出す」とさっぱりしたものだったのでそこは割り切ったはずなのだが、ここに来てそれも危うくなった訳だ。慌てて奨学金を申請し、学費は何とか算段したものの、身一つの状態で自宅を放り出され、ノートパソコンだけは何とか救出したものの、既に両祖父母とも他界、親の兄弟とはもともと疎遠だったこともあり、哉有は住むところも頼れる人もいなくなってしまったわけだ。
友人の家を転々としていたが、それにも疲れてきた半月後の夕方。
「はー……」
バイト先は定休日、友だちも今日に限って都合が悪く、今夜泊めてもらえそうなところがない。財布の中身は寂しくて、とても宿泊施設になんて行けれない。今夜中にまとめなきゃならないレポートもある。
「柊?」
頭上から覚えがあるような無いような声に呼びかけられ、哉有はげんなりと顔を上げた。
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