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柔らかな都和の唇の端からそっと白い胡麻を取ると、ペロリと指先を舐められ、哉有はすくみ上がって赤い顔で都和を睨んだ。
都和はしれっと哉有を見、
「今日は気をつけて行ってこい。襲われそうになったら遠慮なくさっさと逃げろよ」
食器を持って立ち上がった。
どきどきどきどき。
(別に、もっとすごいことしてるんだから、こんなことぐらいでドキドキすることなんてないだろ……って、美咲さんが昨日あんなこと言うから!)
ふと、哉有は食器を洗い始めた都和の顔を眺めた。
でも。
どうでもいい人の唇なんて、触りたくもない。
よな。……普通。
自分の指をそっと見つめ。
「先行くぞ」
「え、あ!今日の夕ごはん」
「子どもじゃねーよ。外で適当に済ませてくる。いいもん食わせてもらってこい」
パタン。
いつも通りの足音で、いつも通りのドアの音。
「行ってらっしゃ、い」
……もー、最悪。顔が、熱いだろ……。
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