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【 夢と現実 】
無我夢中だった。
何も考えられなかった。
とにかく、美流先輩を助けたい一心だった。
見ると、彼女が川の中へと沈んでゆく。
「美流先輩!」
顔が沈み、もがいている手もやがて水の中へと消えていった。
「うおぉーーっ!」
夢中で手足を動かした。力の限り。
もう、川の中へ顔をつけるしかない。
潜って助け出すしか、もう手立てはない!
「はぁーっ! うぶぶぶ……」
思いっきり潜り、水をかき分け美流先輩を探す。
すると、少し濁った川底付近に彼女の姿を確認した。
「うぉーーっ!」
全力で水をかき、美流先輩の手を掴む。
彼女の左手を僕の肩に回してかけると、死に物狂いで水上へ引っ張り上げた。
「ぐおぉーーっ!」
あの時見た光景と同じ。
太陽の光が、冷たい水中から歪んで見えた。
その光はやがて明るくなり、遂に……。
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