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【 死なせない! 】
「ぷふぁーーっ!」
僕の吐き出した川の水が、夏の太陽にキラキラと輝いた。
「ボホボホ……」
「美流先輩、しっかりして! 川岸まで全力で泳ぎますよ!」
先輩はまだ生きている。
絶対に僕が彼女を助け出す。
助け出すんだ!
川岸に彼女を下すと、必死に背中を叩いた。
「水を吐き出して! 先輩!」
「ぶふぉ、ぶふぉ、ぐふぉ……」
彼女の口から大量の水が吐き出される。
「ゴホホ、ゴホホ……」
「はぁ、はぁ、全部吐き出していいから!」
僕は、水泳大会の時に美流先輩にしてもらったように、背中を擦って水を吐き出させた。
ふと右足を見ると膝辺りが青く変色し、左足からは血が流れていた。
「ケガをしているみたいだ。すぐに病院へ行こう」
「うぅぅ……、うわぁーーん!」
いつも凛々しく力強いイメージの美流先輩が、この時初めて、僕の首に手を回して抱き着き涙した。
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