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あの夜の約束
今でも忘れることはない。
月と海の狭間のあの夜を。
あの日交わした約束を。
「誓います」
参列者は海。
神父は月。
ぽっかりとあいた口の中に、爛々と一つの目が光っているような月明かりが、波間に揺れて私たちを見守っていた。
呑み込まれそうな闇はひたと横這いになって、アクビをするかのように優雅で。
私が誓うと、はにかむように彼はくしゃりと笑った。
その笑顔が好きで好きで。
私はこの先何があっても、この笑顔を守りたいと思った。
「「愛している」」
同時に発せられた言葉は、潮騒に掻き消されることもなくただ胸を熱くする。抱きしめあった体温は何も持たない私たちにとって、唯一の希望だった。
真夜中に二人きり。
それは、これ以上ないほど幸せな結婚式。
───どうしてこうなったか
原因はすべて、一週間前にある。
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