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死ぬのに良い日と彼は言った
「お待たせ!」
デートの待ち合わせに来たみたいに、走り寄って笑いかけた。彼は家の裏にあるコンビニの駐車場に車を停めて待っていた。私の荷物をトランクに乗せ微笑み返す。
細々したものは一週間かけて彼の車に運び込んでいたが、厳選して持ってきたはずのこれらが意外と使わないと知るのは、もう少し先のことだ。
「まずはケータイショップだな」
車に乗り込んでから一時間後には、私も彼も携帯を解約していた。そして、手元には事前に彼が買ってくれていた、ツーカーの青いプリペイド携帯が二つ。全く同じそれを、色違いのストラップを付けて自分のカバンにしまった。
私が赤。彼が青。
お揃いのなにかが、とても嬉しかった。
───それじゃあ行こうか
高速に乗って。
何処ともしれない二人だけの場所へ。
その日は本当にいい天気で。
今日死んでも後悔はないと思えるほど、空が青かった。
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