第1章 そうだ。福井に行こう!

8/22
前へ
/938ページ
次へ
匡平センパイと古谷部さんも免許を持っているらしいけど、福井までは遠いので深夜バスで往復することにした。新幹線や特急を使っても行けるけど、高いから却下だ。今回は大人の力を借りず自分達だけで行動するので、格安旅行。福井行き夜行バスに乗り、途中の敦賀で下車して後は電車移動。特急も新幹線も使わないから片道だけで一人5000円前後。これぞ学生旅行だ。そのかわり、ホテルは少し少しだけグレードを上げた。朝食だけで付けて、昼食と夕食は外で食べる。 2泊3日の短い旅行。 観光地と、現地のグルメ情報はバッチリ。 「ふふふふ」 あたしは窓際の席で、グルメ本を眺めながら微笑んでしまった。 深夜夜行バスの車内は2列1列という並びで、真ん中より後部の方のシートに、茉那カップル、陽菜カップル、そしてあたしたちが座っている。満席ではなく所々空席もあって、リクライニングシートも思い切り倒しても寝られるほど広さに余裕がある。カーテンも引けるから、他の人の寝顔を見ることも無さそう。あたしたちのシートの仕切りのカーテンを引いて、咲也はアイマスクをつけてとっとと眠りについた。でもアイマスクを外してあたしの横顔を見つめて、 「光莉。今から食べ物のこととか考えすぎて、興奮してるんだろ。寝た方がいいぞ。お肌、荒れちゃうぞ」 と小声で言ってニヤリと笑っている。あたしは雑誌を閉じて足の下に置いた手提げ袋にしまうと、 「はーい。寝ます。寝ますよぉ」 と言ってアイマスクを取り出して目元にはめようとした。
/938ページ

最初のコメントを投稿しよう!

170人が本棚に入れています
本棚に追加