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「なぁ、じゃあ願い事、教えてくれなくていいから、叶ったら報告してよ。そしたら、言い伝えが本当だってわかるだろ。」
『うん。わかったよ。』
「なぁ、“願いが叶ったら報告する”。約束だかんな。忘れんなよ。」
『うん。約束ね。』
私の目をまっすぐに見つめる翔太。
見つめ返す私。
翔太の瞳を見れば見るほど、欲張りになる。
もっともっとって。
でも、もうこれ以上は望めない。
もうこれ以上、苦しみたくない。
『もうそろそろ帰ろうかな。暗くなってきちゃったし。』
「じゃあ俺、送ってくよ。VIP席乗せてやるし!」
翔太は、自転車の荷台を叩く。
そういう優しさが大好きだったよ。
でも、もうその優しさに苦しみたくないの。
鈴花はいいなぁ……
そのうざったいほどの優しさで、幸せにしてあげてね。
『いいよ。もうそのVIP席飽きたし。じゃあね、また明日。』
「飽きたってなんだよ。おう、じゃ明日な。」
ごめんね、翔太。
約束は守れないや。
だって、私の願いは叶わないから。
あなたの幸せを願う限り。
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