0人が本棚に入れています
本棚に追加
「おーーい!花ーーー!」
私の名前を叫び、自転車を漕ぎながら、片手を大きく振り、こちらに近づいてくる。
アイツは、私の幼馴染の翔太。
家も近く、家族ぐるみの付き合いだ。
翔太は、自転車から降りて、適当な場所に自転車を止める。
私は、少し左にずれて座り直し、翔太が座れる場所を空ける。
翔太は、何も言わずに私の右側に座る。
いつもと同じように。
「こんなとこで何してんだよ。」
『いやっ、特になんも〜。』
「そっか。」
そこから、少しの沈黙が流れる。
ただ波の音だけが、2人の間に響き渡る。
そのとき、翔太がおもむろに立ち上がり、どこかへ走っていった。
しばらくすると、
「ういっ!これやるよ!」
私にコーンポタージュの缶を投げる。
落としそうになりながらも、その缶を両手で受け止める。
それは、小さい頃から2人で飲んでいたものだった。
懐かしい思い出が広がるとともに、コーンポータージュの温もりが手のひらの中で、じんわりと広がる。
『ありがと。』
「いやいや、奢りではないよ。」
おどけた調子で、翔太は私に右手を差し出す。
『ケチやろう。』
私は、翔太の右手を払い除ける。
そして、2人で顔を見合わせて、笑い合う。
この瞬間が、永遠に続けばいいのに。
最初のコメントを投稿しよう!